
色とりどりの地色にさまざまな模様が描かれた着物は、選ぶ段階から着る人の心をわくわくさせてくれます。
着物にはいくつかのマナーがあるため、着物選びでは描かれた模様にも注目したいもの。
実は、着物に描かれる模様はそれぞれ意味を持つのです。
今回は、自分でTPOにぴったりの着物を選べるようになりたい人向けに、着物に描かれる代表的な模様の由来や意味をご紹介します。
着物選びの参考にしてみてくださいね。
目次
着物の模様・柄には意味がある
先にご紹介した通り、着物に描かれる模様にはそれぞれ意味や背景があります。
着ることのできる季節が決まっているものや縁起の良さを感じさせるものまでさまざま。
着物を着用するシーンに合った模様選びも着物を着るときのマナーといわれています。
着物の模様・柄の分類とは
着物に描かれる模様は、大きく以下の通りに分けることができます。
・幾何学文様:一つの文様を規則的に連続して配置した文様
・植物文様:四季を代表する草花を表現した文様
・動物文様:日本の生き物から中国の空想上の生き物まで多様に表現した文様
・風景・自然文様:山や川、海といった自然の風景を表現した文様
・器物文様:身の回りの道具や生活用品を表現した文様
・物語文様:古典文学の一場面やお話を表現した文様
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伝統的な模様・柄の分類もある
着物に描かれる模様のなかでも伝統的なものは、その時代によっても分けることができます。
・吉祥文様:縁起の良さからお祝いの場面で選ばれる文様(松竹梅など)
・正倉院文様:奈良時代の最高峰の工芸品に施された模様(宝相華など)
・有職文様:平安時代に正倉院文様など渡来した文様が和様化した模様(七宝など)
・光琳文様:江戸時代中期に大流行した模様(光琳水など)
代表的な着物の模様・柄をご紹介〜幾何学文様〜
幾何学文様とは、三角形やひし形などひとつの文様を規則的に連続させた文様のことです。
連続文様と呼ばれることもあります。
亀甲

亀甲は、その名の通り亀の甲羅を感じさせる六角形をつないだ文様です。
長寿への願いが込められた吉祥文様でもあり、お宮参りなどでも選ばれています。
亀甲花菱をはじめとする種類も豊富です。
七宝

七宝は、同じ大きさの円を4分の1ずつ重ねてつないだ文様です。
七宝つなぎや輪違いと呼ばれることもあります。
はじまりと終わりのない円は、繁栄や円満といった永遠の連鎖や拡大を意味。
吉祥文様にも分類され、お祝いの着物や帯にも施されていることが多いです。
市松

『鬼滅の刃』でも注目を集めた市松は、色の異なる正方形を交互に配置した文様です。
西欧のギンガムチェックにもよく似ています。
古くは石畳やあられと呼ばれましたが、江戸時代の歌舞伎役者である佐野川市松が好んだことから、市松と呼ばれるようになったそうです。
途切れのない様子から繁栄を意味します。
青海波

青海波は、三重の半円をつなげることで波を感じさせる文様です。
雅楽の『青海波』が名前の由来といわれています。
穏やかな波のような暮らしが末永く続くよう、願いが込められた吉祥文様でもあります。
四季の花などと組み合わせることも多いです。
籠目
籠目は、六芒星の連続のように見える竹籠の網目をモチーフにした文様です。
厄除けや魔除けといった意味を持ち、通年着ることができます。
水辺の柄と組み合わせているときには、夏に選びましょう。
麻の葉

麻の葉は、その名の通り麻の葉に見える正六角形をつなげた文様です。
江戸時代の後期に歌舞伎衣装として用いられ、多くの人々に好まれていました。
麻の葉がまっすぐ早く育つことから、赤ちゃんや子どもの健やかな成長への願いも意味します。
立涌

立涌は、2本の曲線を並べて蒸気を感じさせる文様です。
運気の上昇を意味します。
膨らみに文様を加えた雲立涌や桐立涌などもあります。
鱗

鱗は、交互に並べた色の異なる三角形が鱗を感じさせる文様です。
魔除けの意味を持ち、着物だけでなく武家の装束などにも好まれていました。
紗綾形

紗綾形は、菱形に変形した卍をつなぎ合わせた文様です。
絹地であった紗綾で用いられたことから紗綾形と呼ばれていました。
蘭と菊を組み合わせた本紋は綸子白生地の地紋としても知られています。
網代
網代は、川で魚を捕るための網を感じさせる文様です。
魔除けの意味を持ち、着物だけでなく壁紙などにも用いられています。
代表的な着物の模様・柄をご紹介〜植物文様〜
植物文様とは、日本の四季の移ろいを感じさせる草花を用いた文様のことです。
着物の柄のなかでも一番多いといわれています。
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松竹梅
松竹梅は、松と竹、梅を一体とした文様です。
古来中国で清廉な文人の象徴とされ、日本にも伝わったといわれています。
吉祥文様であり、振袖にも描かれることが多いです。
橘
橘は、延命長寿の果実とされた日本で自生するみかんを用いています。
日本で生まれた貴重な吉祥文様として知られています。
菊

菊は、皇室の紋にも用いられる日本で馴染みの深い文様です。
古来中国では仙花とされ、不老不死や無病息災の願いを意味します。
吉祥文様の一つです。
桐
桐は、皇族だけが用いることのできた高貴な文様です。
現代では一般にも浸透し、格の高さを感じる文様として人気が高いです。
桜

桜は、古くから日本人に愛されている桜の花を用いています。
豊かさや繁栄の意味を持ち、四季の花と組み合わせることで通年着ることができます。
椿

椿は、寒い冬でも葉を落とさない椿の花を用いています。
強い生命力は悪霊を払うとされ、厄除けを意味します。
牡丹
牡丹は、百花の王と呼ばれ、富貴の象徴とされる牡丹の花を用いています。
基本的には春の着物の柄ですが、寒牡丹は冬に、デザイン化された牡丹は通年着ることが可能です。
紅葉

紅葉は、日本らしさを感じさせる紅葉を用いています。
紅葉や楓を文様化し、紅葉紋と呼ばれることも。
長寿を意味します。
葡萄
葡萄は、たくさんの実をつける姿から豊穣の象徴とされる葡萄を用いています。
葡萄の葉と茎、実を文様化した葡萄文は、吉祥文様としても知られています。
鉄線
鉄線は、観賞植物のクレマチスを用いています。
恋愛成就や夫婦円満を意味します。
撫子
撫子は、日本の伝統的な作品にも度々登場する撫子の花を用いています。
日本人女性の伝統的な美しさや品格を象徴します。
唐草
唐草は、蔓草が絡み合う様子を表した文様です。
古代エジプトで生まれたという古い歴史を持ち、シルクロードを経由して日本に伝わりました。
長寿・子孫繁栄の意味を持つ吉祥文様です。
代表的な着物の模様・柄をご紹介〜動物文様〜
動物文様とは、獣や鳥、空想上の生き物といった動物を用いた文様のことです。
日本は農耕文化が根強いため、他国と比べると種類は少ないといわれています。
鶴

鶴は、長寿延命の象徴とされる鶴の姿を用いています。
夫婦円満の意味も持ち、吉祥文様として定番といわれています。
兎
兎は、中国で長寿の象徴とされる兎の姿を用いています。
福を集める、飛躍、子孫繁栄を意味します。
蝶
蝶は、蛹の期間をじっと過ごしてから大きな羽で舞う蝶の姿を用いています。
その姿から、立身出世・不死不滅を意味します。
鳳凰
鳳凰は、古代中国の伝説の鳥である鳳凰の姿を用いています。
吉祥文様でもあり、平和や高貴を意味します。
千鳥
千鳥は、群れで飛ぶ千鳥の姿を用いています。
『千(多くのものを)取り(手に入れる)』にかけて勝利や豊かさを意味します。
波紋と組み合わせた『波に千鳥』も縁起の良い柄です。
とんぼ
とんぼは、勝ち虫とも呼ばれるとんぼの姿を用いています。
勝利の意味を持ち、武具の柄としても選ばれています。
貝尽くし
貝尽くしは、異なる形の貝を組み合わせて用いています。
生命や豊穣、夫婦円満・家庭円満を意味します。
荒磯
荒磯は、鯉が跳ねる姿を用いています。
中国の故事にちなみ、出世を意味します。
吉祥文様の一つです。
代表的な着物の模様・柄をご紹介〜風景・自然文様〜
風景・自然文様とは、自然風景を取り入れた文様のことです。
ほかの文様と組み合わせ、場面の区切りとして用いられることもあります。
流水

流水は、水の流れを曲線を重ねることで表した文様です。
清浄・魔除けを意味し、吉祥文様の一つです。
瑞雲
瑞雲は、縁起が良いことが起きる前兆とされる雲の様子を用いています。
有職文様・吉祥柄の一つです。
雪輪

雪輪は、雪の結晶を円で表した文様です。
雪は春に雪解け水になることから、豊穣・豊作を意味します。
雲取り
雲取りは、風によって雲がなびく様子を表した文様です。
輪廻転生・運気上昇を意味します。
雪持ち笹
雪持ち笹は、積もる雪の重さに負けない笹の枝葉を表した文様です。
豊作を意味します。
代表的な着物の模様・柄をご紹介〜器物文様〜
器物文様とは、道具や生活用品といった身近なものを表した文様のことです。
文様のなかには、王朝文様と呼ばれるものもあります。
扇面
扇面は、広げた扇の様子を用いています。
末広がりから開運・繁栄を意味します。
熨斗文
熨斗紋は、祝儀物に添える熨斗の様子を用いています。
吉祥文様の一つであり、ほかの吉祥文様と組み合わせることも多いです。
手毬

手毬は、子どもが遊ぶ毬の様子を用いています。
家庭円満・縁結びを意味します。
貝桶
貝桶は、平安時代の王朝遊びであった貝合わせで使われる貝桶の様子を用いています。
対になる貝だけが綺麗に噛み合うことから、夫婦円満を意味します。
宝尽くし
宝尽くしは、中国の八宝を由来とする宝物を組み合わせた文様です。
開運や招福を意味し、時代・地域によって宝の内容が異なります。
代表的な着物の模様・柄をご紹介〜物語文様〜
物語文様とは、日本の古典文学の一場面を描いた文様のことです。
江戸時代に広く好まれ、源氏物語や伊勢物語が多く用いられました。
物語文様は、表現の方法によって御所解模様と留守模様に分けることもできます。
まとめ
着物に描かれる模様について、由来や意味とともにご紹介しました。
着物に描かれた模様の一つひとつにこだわって着物を選びたいときには、創業から85年以上の老舗である着物専門店の林屋にご相談ください。
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